アメリカのミニマル・アートを代表する彫刻家 カール・アンドレ。
1960年代からマテリアルを単純に構成し、本質を定義する作品には多くの芸術家たちが影響を受けています。
ここでは、カール・アンドレの作品、経歴、展覧会をみながら、ミニマル・アートの心地よさを考察していきましょう。
カール・アンドレ 概要
アンドレの作品は、レンガ、ブロック、木材、金属などを配置し、その原材料の形を変えずに接着剤なしで構成していきます。物質の性質の探求という目的で、素材の特徴とそれを取り巻く環境によって形成されています。
彫る、加工するといった彫刻のプロセスを行わずに、配置によっての彫刻の定義は、新世代の彫刻の本質を定義することになりました。「場所を生み出す」作品はミニマリズムのみではなく、ランド・アートにも大きな影響を与えています。
カール・アンドレのプロフィール 経歴・学歴・受賞歴
引用元:https://www.fondationlouisvuitton.fr/en/collection/artists/carl-andre
生年月日: 1935年9月16日
出身地:アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 クインシー
学歴:オハイオ州ケニオン大学中退
アンドレは大学を中退した後、クインシーでしばらく働き、ノースキャロライナで兵役を終え、1957年に芸術に打ち込むため、ニューヨークに移りました。
彼の友人たちと詩、エッセイ、美術を学び合い、アンドレはブランクーシの彫刻に特に惹かれていきました。
コンスタンティン・ブランクーシ 1907-08, 接吻 引用元:https://gagosian.com/artists/constantin-brancusi/
この頃からすでに木材配置の実験を始め、のこぎりで切って単純な幾何学的な形を作っています。
また、フランク・ステラの「ブラック・ペインティング」にも大きく影響されました。ステラは1950年代の終わり、黒いエナメル塗料で均一な平行な面だけで構成された一連の作品で認知度を高めていました。
フランク・ステラ 1959 引用元:https://www.wikiart.org/en/frank-stella/die-fahne-hoch-1959
この芸術性の余地をほとんど残さなかった技法を「構成主義」と呼び、同一でありながら個体である作品に魅了されたそうです。
しかし、この時期、アンドレが「構成主義」を探求し続けたのは、彫刻ではなく、言葉とテキストによるものでした。1960年はじめは、アンドレは彫刻をほとんど制作していません。というのも、彼はペンシルバニア鉄道で鉄道員として働き、三次元アートを制作するためのスペースもお金もなかったからです。
代わりに、彼は特定のテキストから厳選した単語やフレーズから詩を「構築」していました。フラグメントを書き留め、単語の長さやアルファベット順、または単純な数学的システムなど、決められたプロトコルに従ってページに配置しています。
しかし、この肉体労働者の経験と秩序ある貨物列車運行にかかわる仕事は、彼の芸術性に影響を与えたようです。アンドレが今日でもオーバーオールと簡素なシャツを着ているのは、そのためだとも言われています。
1960年後半からは「構造としての彫刻」に取り組み、レンガ、木材、金属板などの同一のユニットを組み合わせ、配置によっての空間彫刻を制作していきます。例えば、金属板を床に敷き詰め、その上を渡ることができる作品は、従来の向き合うタイプの彫刻とは全く異なった空間へ鑑賞者を連れ出します。
アンドレの彫刻は外見に彫るなどという変化を加えていませんが、同じユニットを展示室の違う配置でおくことによって、違うものになっていきます。彼の作品はどれも似通ったものに見えますが、構成と配置によって大きな変化が起きていることがわかります。
カール・アンドレ 私生活のスキャンダル
アンドレは1985年 50歳でキューバ系アメリカ人芸術家 アナ・メンディエタと結婚します。
アナ・メンディエタ 1948−1985
彫刻、絵画、ヴィデオアーティストとして活躍し、作品は自伝的なもの、女性解放を示唆するものが多い。Silueta Works in Mexico 引用元:https://www.icaboston.org/art/ana-mendieta/silueta-works-mexico
結婚してから8ヶ月後、アナは一緒に住んでいた34階建てのマンションの窓から落下し、死亡しました。
アナが落下するところを目撃する人はいませんでした。しかし、二人が口論していたことや、アナが「No! No! No!No!」と叫んだいた事を聞いていた証人がいました。またアンドレの鼻と腕に争ったような傷があったため、彼は逮捕されました。
3年後、無罪判決を受けています。けれどその判決に納得のいかないフィミニストの芸術団体が抗議しています。2017年、抗議者たちはロサンゼルスのMOCAで開催された「The Geffen Contemporary」での展示会のオープニングに出席し、「カール・アンドレはMOCAにいます。アナ・メンディアタはどこ?」というカードを配っていました。
アンドレは現在、芸術家のメリッサ・クレッチマー(1962−)と結婚しており、ニューヨークで暮らしています。
カール・アンドレの作品
Carl André, Cedar Piece, 1959/64 😍 Beautiful artwork Contemporary Collection Kunstmuseum Basel 🇨🇭#carlandre pic.twitter.com/kvlnQQUAev
— Maria Stark (@starkandart) September 30, 2017
1966 Spill 引用元:https://ro.pinterest.com/pin/331929435032657938/
144 Aluminum Square 1967引用元:https://ro.pinterest.com/pin/331929435032657945/
Uncarved Blocks, 1975. 引用元:https://www.e-flux.com/announcements/31212/carl-andre-at-dia-beacon/
カール・アンドレの個展・展覧会・美術館
静岡県立美術館
鉛と亜鉛のスクエア 1969年
https://www.flickr.com/photos/mt_motoki/113319781
ニューヨーク ディア・ビーコン
ミニマリズムの心地よさ
引用元:https://www.ft.com/content/ba6aef6a-66db-11e2-a83f-00144feab49a
アンドレの作品はどれもシンプルで、鑑賞者は興味が持てない場合もあるのではないでしょうか?
もし、何の予備知識もなく、単に気が向いて、美術館に行ったとします。現代美術が展示してある部屋に、アンドレの彫刻があったらどうでしょう? 組んである木材を横目で見、置かれている金属板を一応踏んでみる、といった具合で、きっと感動することはないとおもいます。「ふーん、現代彫刻ってこんなものか」という程度のことで理解しようとはしないでしょう。
けれど、しばし立ち止まってその作品を眺めてみてください。単純に置かれた木材に平穏を感じませんか?これが芸術であるかどうかを判断する必要はありません。そして可能ならば、木材と木材の間をゆっくり歩いたり、登ってみたらどうでしょうか?それは、ただのアスレチックの器具と化しますか?
もし、アスレチックのような気分を味わったのなら、あなたはもう別の世界に入り込んでいるわけです。美術館にいながら、あなたの感覚は、ジム、もしくは広々とした公園にいます。
そして、彼の作品に芸術性を感じたならば、それは象牙の塔からの思考であっても構わないでしょう。俗世と離れてただ得も知れぬ心地よさに浸るのは、至福の一時でもあるからです。
「シンプル イズ ベスト」という言葉がぴったりなアンドレの作品を、ゆったりと眺めると瞑想をしているような気分になりませんか?
参考:https://www.theartstory.org/artist/andre-carl/
https://www.tate.org.uk/art/artists/carl-andre-648
