ユーミンの「THYPOON」は、既婚者、もしくは恋人がすでに居る男性との恋の曲ですね。
女性は割り切った恋であると、理性で感情を抑えて付き合っていますが、タイフーンが来ることにより、真の欲望を出してしまいます。
この曲はもう30年以上前の曲ですが、時代を感じさせません。
「ポーツ・オブ・ノーツ」もこの曲をカバーしていて、歌詞の雰囲気がより濃厚になっていると思います。
「TYPHOON」 ポーツ・オブ・ノーツ
ゆったりと歌う姿の影に、猟奇的な雰囲気を漂わせています。
決して自分にものにはならない恋人を愛してしまった女性が、タイフーンによって魔の力を目覚めさせてしまう、ショートストーリーをどうぞ。
Typhoonの歌詞の意味 超解釈ショートストリー
「”Typhoon “ の解釈 南頭東沿岸」
彼女は「海からの風」が吹く都会から少し離れた町に住んでいる。
アメリカ北東部出身のリアリズムの画家の描いた絵ほどは、彼女の家は古くなく、窓から海が見えるわけではなかったが、「海からの風」はこの町を包み、潮の香りは常に彼女にまとわり付いていた。
この土地に住んでいるのは、仕事で使うハーブが他の地よりも多く生息しているからだ。 暖かい湿った空気が様々なハーブを育てる。 この仕事で彼女は多くの人間と会う必要のない日常を、短毛のブルースモークの猫と暮らし、必要な時に、必要な物が買えるだけの生活をしていた。
しかしそれよりも、この場所はあの遠い夏の日々を思い出させる。ここに居ればもう一度あの時に愛した、会えるはずのない恋人への想いが蘇ってくる。
彼女の家に時折、立ち寄る訪問者がいる。
この訪問者に彼女の飼い猫は無関心だが、彼女は彼をいつも微笑みながら招き入れた。
彼は商用の帰りにこの土地に立ち寄り、彼女に会う。
柔らかな声で彼女の名前を呼び、贈り物を彼女に渡す。
後ろから彼女を抱きしめ、愛の言葉を囁く。 彼はとても優しい。
次の日の遅い朝に、ブラインドを上げ、よく手入れがされている小さなブリティシュ系の庭を見ながら、彼はお茶を飲む。
夏の終わりを告げる海からの風が、彼女の板張りのダイニングに入り込む。
そして彼は帰るべき家へと帰っていく。
こうした恋はもう何度目になるだろう。
この恋もまた情熱と冷静の間を彷徨ってはいるのだけれど、耐えきれぬ苦しみが襲ってくることはない。全ての恋は昔の恋人の欠片を集めているにすぎないのだ。
あの夏の日々の恋は、まるでセイフティネットのない綱渡りだった。彼女は今でもその恋人だけを愛している。
二度と会うことはない、という現実をはっきりと認識することはできない。
彼女は夜明けに風の音で目覚める。
Typhoonが来る。 薄い雨の音が聞こえる。
ブラインドの隙間から厚い雨雲が空を覆い始めるのが見える。雲の隙間からは光が差し込み、あたりの草や木は銀色を帯びて、揺れている。
Typhoonが来る。
海からの風はこの小さな町をすぐに包み込むだろう。
あの夏の海辺に吹いていた、むせかえるような気怠い潮風を感じる。
それでも愛して止まないあの夏の恋人がまだ戻ってこないは、何故なのだろう。
ベッドで眠る端正な横顔の訪問者の肩にそっとシーツを掛け直す。
まるで、忘れられない、脳裏に焼きつて離れない愛しい恋人に見える。
今日はこの訪問者を帰したくなかった。
Typhoonが呼び起こした悲しみと欲望は、彼女の心の空洞に風の音と共に強まっていく。
彼を私だけのものにしてしまおう。彼の魂を深い海へ閉じ込めてしまおう。
もう何処にも行かせない。この気まぐれな訪問者は、あの愛する恋人のように、私から去ることは二度とない。
ブルースモークの雨雲は空全体を敷き詰める。
雨音は激しくなり、もう外へは誰も出られない。湿った海風はメロウの歌声のように、耳を麻痺させる。
いつものように遅い朝に起きた訪問者は、ダイニングの椅子に腰かける。
彼女はブラインドを開けず、薄明りの中で、いつものようにお茶を差し出す。
外は夜のように漆黒に包まれ、何一つ光は見えないが、タイフーンの音は、もう家の中には入って来ない。
テーブルにはうつ伏せになって、今にも椅子からずり落ちそうな男の姿がある。
ブルースモーク色の飼い猫は、少し離れた皮張りのカウチからそれを見ている。
Fin
ご感想、コメントを送っていただけたら幸いです。
ユーミン「TYPHOON」の歌詞の意味は?超解釈ショートストーリー
楽しく拝見させていただきました!Good!
何年も前からわたくしもこの歌詞が気になっていました。
この歌詞の驚くべきところは、ベットの中の思考で終始しているところです。そこにはピロートークもありません。女性の世界観のみです。
「あの夏の島の苦しい潮の香り」
苦しい、が大切な言葉となっていると思いますが、なんとも大人の解釈が巡ります。「シーツの海」というワードにエロチズムを感じます。
わたくしは、尋ね人と表現されていた人物は、過去に苦しい別れをした彼本人と解釈しておりました。が….間違いだと思いました。その後知り合った人のほうがより文学的ですね。別れた彼に会いたくなるストーリーはユーミンの得意技ですが…
この曲を、小林麻美も歌っているのですが、雰囲気はとてもいいです!
が、残念ながら歌詞を理解せずに歌っているように思えます。
アメリカ北東部出身のリアリズムの画家の描いた絵のような家に住んでいるというシチュエーションにはぴったりの雰囲気の女性ですが(笑)
コメントありがとうございます。
私もこの曲と歌詞が好きで、いろいろと想像を掻き立てられ、「Typhoon」をベースに、他のショートストーリーも創作しています。
小林麻美さんが歌っているのも、恋の経験値が高くない女性の惑乱を感じられて、素敵ですね。
私は南国ムードがある Port of Notes の「Typhoon」も、とても好きです。