誰もが知る偉大なる芸術家パブロ・ピカソ。可能であるならば、一点は手に入れたいと美術に興味がない人でも思うのではないでしょうか。
オリジナルであれば一般人には全く手の届かない値段がついていて、ときには美術館でさえ購入不可能な金額が着いています。
長生きし亡くなるまで精力的に作品を創作してきたピカソは生涯作品数が14万点以上と言われています。この多大な作品数故に、偶然にピカソの作品が日常品価格で購入できることもあるようです。
ピカソの陶器皿
2023年5月、ニューヨーク市に住んでいるイタリア移民の36歳の女性は、いつものように日用品を買うためにリサイクルショップへ行きました。
物価高の今日、生活に必要な家具、装身具、食器などリサイクルショップで購入することが多かったのです。
その日は昨日はなかった陶器の食器のセットが陳列棚に並んでいるのが見えました。
その皿の絵柄はだれもが知っている偉大な芸術家の画風によく似ていました。このお皿をテーブルに並べたら「映える」だろうなと思いながら、裏側を見てみると、「ピカソ」とサインが入っています。
彼女は、もしかしたらこれは何か特別なものではないかと感じ、急いでレジで6ドルを支払い、家路に向かいました。
家に戻るとすぐにインターネットでピカソの作品とサインを調べると、自分が買った食器を全く同じ画像を見つけ、彼女の心臓は高鳴りました。そして、近くにあるオークションハウスで専門家に鑑定してもらうと、3000ドルから5000ドルの値段がつくと言われました。
実際にオークションに出店してみると、その食器の値段はどんどん上がり、なんと16000ドルで落札!
ピカソのポスター
2012年5月、オハイオ州に住む失業中の中年男性は、転売するために質の良い複製作品をリサイクルショップで探していました。
パブロ・ピカソのポスターに出くわした時、彼はこれが傷みの少ない複製と判断し、14.14ドルで購入しました。
家に戻り、インターネット検索を行い、右下の赤いマーキングを詳しく調べると、それがピカソの署名であることが判明しました。
彼はそのポスターをアートの専門家に持っていき、ポスターがリノカットであることを発見しました。ピカソはリノリウムにデザインを彫り、それをインクで紙に押し付ける版画を後年多く制作しています。ポスターは、1958年にフランスのヴァロリス市の毎年恒例の陶芸家ショーのために作成されたものです。このサイン入りポスターは100枚しか作られておらず、彼の買ったポスターには「6番」と記されていました。番号が一桁の場合、アーティスト自身が確認している可能性が高いそうで、より価値があります。
彼は個人バイヤーに7,000ドルで売りました。
リサイクルショップでピカソも見つかる?
ピカソは生涯で約15万点の作品を残したと言われ、陶器は約300点、版画は約10万点だそうです。
これだけ多くの作品が存在しているのなら、リサイクルショップで見つけてしまうことは、「何かの間違い」とは言えないでしょう。
例えば、遠縁の方の大量の遺品を整理しなければならないとき、もし片づけを任された人が、美術に興味がなかったとしたら、ごみ箱かリサイクルショップ、もしくはヤードセールへ直行です。
それでも、このような真作らしきもの、高値で買い取ってくれるような品物をリサイクルショップで見つけるのは、常連でしょう。
アメリカではヤードセール、リサイクルショップ、フリーマーケットには、「どこからこんなに人が集まるのだろう?」と不思議に感じるほど、いつも人が大勢群がっています。そして、並んでいる商品といえば、古びたガラクタで、「こんなものを買って何に利用するのだろう?」とまた疑問に思います。
そういう人たちは殆どが転売ヤーで売るために買っているのです。
上記の二人もリサイクルショップの常連であり、見つけたピカソの作品が高値で売れるとわかると、サッサと売ってしまい小金を得て、大喜びです。
美術愛好家としては、偶然手に入った価値ある偉大な芸術家の作品を、簡単に手放してしまうのは少々悲しい気持ちになります。願わくば次回はピカソが好きな誰かが、リサイクルショップで真作を見つけてくれますように。