Contemporary Art

ダミアン・ハーストの経歴・作品・価格・展覧会。稼がなきゃアートじゃない?

イギリスの一番稼ぐ現代アーティスト ダミアン・ハーストDamien Hirst。

「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)」の中心的な存在であり、実業家、コレクターでもあるハーストの代表作は、死んだ動物をホルムアルデヒドによって保存したシリーズです。

ここでは、ダミアン・ハーストの経歴・作品・価格・展覧会を見ていきましょう。

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ダミアン・ハーストの概要

Damien Hirst | Maddox Gallery引用元:https://maddoxgallery.com/artists/damien-hirst/

生年月日:1965年6月7日

出生地:イングランド ブリステル

学歴:Leeds College of Art, Goldsmiths College, London

スタイル:コンセプチュアル・アート、ブリティッシュ・アート、崇高アート

コレクターのチャールズ・サーチと密接な関わりにより、1990年代のアート界のスーパースターとなりました。ホルムアルデヒドのタンクに吊り下げられたサメを、「生きている人の心の中で、死の身体的不可能性」を表し「死」が彼のテーマとなって多くの作品を制作します。

ハーストの大衆や批評家の注意を引くための誰にでもできる戦略により、作品を高価格で売ることに成功しました。これにより、ハーストはアートの世界の中心人物になり、市場で最も高い価格の作品を創作しています。

ハーストは現代美術市場のニーズを見据えた先見の明のある人物でした。これはそれ自体が時代に合った芸術の形式であるといえるのではないでしょうか。

ダミアン・ハーストの代表作品

In and Out of Love (White Paintings and Live Butterflies) 1991

In & Out of Love (White Paintings & Live Butterflies), 1991 - Installed at  Tate Modern, 2012 : Damien Hirst : Artimage引用元:https://www.artimage.org.uk/3844/damien-hirst/

1991年にロンドンで開催されたハーストの最初の個展は、生き物を使用し、「愛とリアリズム、夢、理想、シンボル、生と死」に基づいて構築されました。

蛹を白いキャンバスに接着し、そこで蝶へ孵化し、果物を食べさせ、交配させ、寿命を終わらせます。「シンボルは本物とは別に存在し、蝶は死んでも美しい」ことが、「結局すべてが芸術であり、それをすることは狂気の沙汰である」と発表しています。

翌年からも動物を使ったグロテスクな作品を次々と発表し、アメリカ、ヨーロッパ、中国など世界中で展開する広告代理店「サーチ・アンド・サーチ」(Saatchi & Saatchi)の創業者で、アート・コレクターでもあるチャールズ・サーチがパトロンとなります。

ハーストは、2012年にこ野帳を使ったインスタレーションを再考しました。Damien Hirst's butterflies: distressing but weirdly uplifting | Butterflies  | The Guardian引用元:https://newmediarockstars.com/2012/10/

2つの窓のない部屋に、ロンドンの自然史博物館の蝶の専門家によって蝶が毎日持ち込まれ、博物館のスタッフによって、蝶が死んだときに排除されました。これは、人生の脆弱性を熟考する機会として高く評価されました。しかし、この展示は勿論、動物愛護協会からの批判を浴びています。私個人も、蝶の生息地でない場所に置かれて死んでいく蝶たちに憐憫の情は隠しきれません。芸術もしくは哲学のために、人間以外の生命をコントロールするのは、まるで中世のようで、時代を逆行しているように感じます。

The Physical Impossibility of Death in the Mind of Someone Living 1991

誰かが生きている心の中での死の身体的不可能性(1991)引用元:https://www.theartstory.org/artist/hirst-damien/artworks/#nav

ハーストが美術界、一般的に有名になったのはホルマリン漬けされた動物作品シリーズです。これは、1990年代にはイギリスの芸術の象徴とも見なされてきました。

4メートルのイタチザメを透明ケースにホルマリン漬けしたこの代表的な作品は、ターナー賞にノミネートされています。チャールズ・サーチによって、全面的に作品と展覧会の資金を提供され、新しさ、奇抜さを求める観賞者たちに支持されました。しかし、このシリースは、ロンドンやニューヨークの芸術分野の保守派によって全面的に非難されました。

ハーストは、このガラスタンクの生き物たちに象徴されるのは「人生のすべてが非常に壊れやすいのではないかという恐れからこの作品が生まれた」とコメントしています。そして「壊れやすさが包まれた彫刻を作りたい」「死は行きている者にとっての不可能性」の表現のためにガラスタンク作品を制作しています。

ガラスタンクの作品は1985年にジェフ・クーンズの吊り下げられたバスケットボールが、明らかな先例としてあります。

Jeff Koons, “Three Ball Total Equilibrium Tank (Two Dr J Silver Series, Spalding NBA Tip-Off)” (1985).

What is Neo-Geo and How Is Jeff Koons Involved in the Movement? | Art for  Sale | Artspace

Abalone Acetone Powder 1991

overview引用元:http://www.damienhirst.com/abalone-acetone-powder/

1988年以来、動物のホルマリン漬けと並行して、ハーストの作品として知られているいわゆる「スポット・ペインティング」。錠剤に例えられ製薬絵画ともいわれています。

数億円の価格が付きましたが、これらのスポットペインティングは彼の指示の下でアシスタントによって作成されていたので、後に価値についての疑問を引き起こしています。

これらのキャンバスの明るい色彩のドットは、ハーストの死への没頭と対立するように見えるかもしれません。このドットのそれぞれは、医師の同意なしにアクセスできない、中毒性の致命的な物質の分子構造を模倣しているのです。したがって、これらの絵画は、キャンディーのような薬物を調剤する数十億ドル規模の製薬業界についての機知に富み、荒んだ状況を表現しているのです。
この作品は、ゲルハルト・リヒターやマーク・ロスコなど、カラーリストのハーストが賞賛しています。ハーストは、自分は常にカラーリストであり、色の楽しさを味わうための手段だった、と語っっています。

Aubade, Crown of Glory 2006

Damien Hirst: Superstition, Beverly Hills, February 22–April 5, 2007 |  Gagosian引用元:https://gagosian.com/exhibitions/2007/damien-hirst-superstition-beverly-hills/

Detail from Damien Hirst's 'Aubade: Crown of Glory' 2006 | Damien hirst  butterfly, Hirst, Damien hirstdetail  引用元:https://www.pinterest.com/pin/8303580537223859/

蝶はハーストの初期の作品から頻繁に使用され、この大きなステンドグラスの窓(約2.4x 3m)は、何千もの鮮やかな色の蝶で構成されています。その形は天国に到達するような、宗教的な図像を呼び起こします。

キリストの復活の象徴である蝶は、ハーストの作品においてより広い意味を持っています。蝶は上昇の象徴であり、まるで行きているかのように宙に浮いているように見えます。生命の儚い性質と、それを超える何かの可能性に私達に問いかけているようにも見えます。

21世紀の作品は、陰惨なイメージからから離れ、「美」を主体としますが、その基本的な方法とテーマ「生と死」は同じです。

For the Love of God 2007

Damien Hirst diamond set skull 'For the Love of God' - Bentley & Skinner,  the Mayfair antique and bespoke jewellery shop in the heart of London引用元:https://www.bentley-skinner.co.uk/in-the-press/damien-hirst-diamond-set-skull-for-the-love-of-god/

この彫刻は8000個のダイヤモンドをちりばめた人間の頭蓋骨です。死の象徴である頭蓋骨は、ハーストの作品と同様に、それは激しい論争を引き起こしました。

含まれている材料の天文学的なコスト(約60億円)で購買価格は沸騰しましたが、ハースト自身が匿名の入札者の一人であることを明らかにして、作品は宣伝にすぎないという抗議を巻き起こしました。

このダイヤモンドの輝きは、ハーストのアーティストの輝きであり、彼の作品を取り巻く宣伝と切り離せなく、これもまた、芸術とみなされています。

ダミアン・ハーストの展覧会

「Cherry Blossoms」

It Seemed Really Tacky': Why Damien Hirst Loves Painting Cherry Blossoms  Now—and What They Have to Do With Death引用元:https://news.artnet.com/art-world/damien-hirst-cherry-blossom-paintings-1532110

会期:2020年6月〜11月
会場:カルティエ現代美術財団
住所:261 Boulevard Raspail, 75014 Paris

個展で発表される「Cherry Blossoms」は、ハーストが「自然に湧き起こる絵画の楽しさを見直したもの」だとそうです。

印象主義と点描画法とアクションペインティングを参考に、 濃厚な筆致で描かれた「スポット・ペインティング」シリーズを彷彿とさせます。しかし、この作品はハースト自身の手描きの痕跡が色濃く残る点で、ひょうげんされていて、新境地への段階といえるのではないでしょうか。

ダミアン・ハースト作品価格

2008年、競売大手サザビーズがロンドンで開催した、ダミアン・ハーストの作品223点のオークションは、落札総額が1億1100万ポンド(約211億円)に達し、1人の芸術家の作品落札総額としては最高記録を樹立しました。

過去の最高記録は、1993年にパブロ・ピカソの作品88点が総額2000万ドル(約21億円)で落札。

子牛のホルマリン漬け「The Golden Calf」は1030万ポンド(約19億円)で落札され、ハーストの作品としては最高額。

Damien Hirst's Two-Day Auction Bypasses Sotheby's Estimates in London - The  New York TimesThe Golden Calf 引用元https://www.nytimes.com/2008/09/17/arts/design/17auct.html/

子馬のホルマリン漬け「The Dream」は230万ポンド(約4億4000万円)、「Reincarnated」は160万ポンド(約3億円)で落札されました。

Reincarnated by Damien Hirst on artnetReincarnated  引用元:http://www.artnet.com/artists/damien-hirst/

特筆すべきは、ハーストはギャラリーやディーラーを通さず直接自分の作品を、サザビーズのオークションにかけたことです。これは前例のないことで、芸術家でありビジネスマンであるハーストの実力を知らしめました。

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売れれば芸術なのか?

世界的な金融破綻の中、ハーストの作品は天文学的な価格で売買されました。その作品たちは通常美を感じない死んだ動物のモルマリン漬けです。アートは、一握りの裕福な人間たちの投資の手段でしかないのでしょうか。

芸術家にとっては作品の売買は死活問題ですし、高値がつけばそれに越したことはありません。それにアート・ワールドの巨匠ともなれば、自分の思い通りの制作もできるし、現在ハーストが行っているチャリティワークで世界に貢献できます。

日本でも人気のあるバンクシーは、同じブリストル出身ということもあり、2015年にバンクシーが企画したプロジェクトアート『ディズマランド』にも、ハーストは参加しています。正直、バンクシーも芸術性については疑いをむけたくなるような作品なのですが、作品は盗難にあうほどの高値がついているのは、やはり、話題と注目があるからなのでしょう。

現代美術は、これといった定まった範囲がなく、斬新なクリエイティブなものがもてはやされる気がします。しかし、そこにどんな芸術性があるのかを我々は深く考えるときではないでしょうか。

参考:

https://www.artpedia.asia/damien-hirst/ https://ottawacitizen.com/news/pop-life-a-not-so-shocking-gamble/

http://www.damienhirst.com/news/2019/cherry-blossoms-in-paris/

https://www.theartstory.org/artist/hirst-damien/#nav/

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