ニューヨーク在住の日本人現代美術家 松山智一(まつやま ともかず)さん。
日本での活動歴はなく、作品は、ミックスメディアにポップな色彩、日本文化を漂わせるモチーフが組み込まれ、優雅な描線が踊り楽しいものが多いです。
松山智一さんのプロフィール、経歴、学歴、賞歴を紹介します。
また作品、アトリエ、個展、価格もみていきましょう。なぜ松山氏は日本を拠点として活動しないのでしょうか?
松山智一のプロフィール 経歴・学歴・賞歴
引用元:http://www.cbc-net.com/topic/
生年月日:1976年4月30日
出身地:岐阜県高山市
学歴:上智大学、NY市立美術大学院 プラット・インスティチューション。コミュニケーション・デザイン科 首席で卒業
松山さんは子供の頃、アメリカで数年過ごしバイリンガルの能力を身につけていました。プロのスノーボーダーだったのですが、事故で続けることができなくなり、広告のグラフィックデザインをしていました。しかし、「自分の土俵で相撲をする」ことを選んだ松山さんは芸術家の道に進みます。
2002年に渡米し、大学院在学中にNY私立美術大学の講師をしたり、ハーバード大学でアートのプレゼンをしていました。
江戸、明治時代の日本美術の主題を取り入れたポップアート作品が、ニューヨーカーの間で徐々に人気になり、コレクターも増え、欧米で多くの個展を開いています。
最近ではニューヨークのソーホー近くにある巨大な壁画「バワリーミューラル」の制作で注目を集め、一流の現代美術家として注目を集めました。
バワリーミューラル Bowery Mural
1980年代にキースへリングが描いた横幅約26m、高さ約6mの巨大な壁画が有名になり、1年に2〜3回様々なアーティストによって上書きされています。2018年にはバンクシーの作品もありました。
引用元:http://www.osanpotsushin.com/
松山さんはスプレーペイントではなく、マーカーやステンシルなどの多くの素材で、1日約16時間掛けて壁画を完成させています。ニューヨークでは”Matzu”(マツ)アトリエと呼ばれています。
引用元:https://untappedcities.com/2019/
この壁画にも日本の植物や流行のファッションデザインがはいっていますね。
余談ですが、松山智一さんの兄はドラマ、映画監督の「信長協奏曲」などを手掛けた松山博昭さんです。
賞歴
- 2014年 香港のハーバーシティギャラリーパブリックアートコミッション受賞
松山智一のアトリエ
引用元:http://www.spoon-tamago.com/
松山智一さんのアトリエはニューヨークのブルックリンにあり、村上隆やKAWSなど多くの現代美術家のスタジオがある場所です。
アトリエでは、3人のアシスタントと共に制作しており、制作時間は多大です。絵画はフリーハンドでペインティングされているとは思えないほど緻密ものです。
まずスケッチをし、既存作品をPhotoshopで見ながら着色。過去に一度つくった色はすべて番号付けしてストックしているそうです。使用する色は、漢字で表現できる和の色が多く、それらを別のトーンと組み合わせをすることで、アメリカンポップ感をだしているとか。
長い手順をふみ、様々な素材が必要なので、松山さんのアトリエは他のアーティストに比べると、きちんと整理整頓されていて、必要なときに必要なものが取り出せるように配置されています。それぞれの素材をタッパーに分けラベルを貼っていたり、足りないものはホワイトボードに書いておきます。インタビューでは「几帳面なA型のアシスタントなら雇う」と冗談を言っていました。
引用元:http://www.spoon-tamago.com/
コストは価格を上回る
松山さんの作品の価格は現在平均30万円前後(上昇中)ですが、売値の約半分は手数料として画商がとりますから、コストのほうが上回っていることが多いそうです。
水を含んだ塗料を使用し、時には20回重ね塗りし、特殊な形のキャンバスは、工場に発注するので、通常よりも最大10倍のコストがかかる場合があります。また彫刻を作るのにかかる費用は、メルセデスベンツCクラスが買えるほどです。
しかし、松山さんは、それでも自分の創りたいものを創ることを辞めることができないそうです。最終的には自分自身への投資になることを願っています。
松山智一の作品
We Met Thru Match.com, 2016 引用元:https://www.artsy.net/artwork/
Around We Go, Leavin’ 2018 引用元:https://www.ggagallery.com/matzu
引用元:https://guyhepner.com/artists/
The Future Is Always Bright , Study 3 2010 引用元:http://www.cbc-net.com/
The Wind of the Nights 2008 引用元:http://www.shift.jp.org/
Wherever I am 2009 引用元:http://www.shift.jp.org/
ポップな色彩でありながら、日本画のモチーフや曲線が入っているところが、メリティングポットを感じさせますし、日本にいては創れないアメリカでの日本美術との融合が、たまらなくいいですね。
松山智一さんの他の作品は松山智一サイトを御覧ください。
松山智一の日本での展覧会は?
「Boom Bye Bye Pain」展が2021年7月にKOTARO NUKAGA(六本木)で開催されていました。
また、2019年前半に、東京 天王州の「KOTARO NUGATA」でアメリカを拠点として活躍するアーティストの『FIXED CONTAINED』というグループ展が開催され、キュレーターも務めました。
海外での松山さんの個展は下記サイトを御覧ください。
https://matzu.net/exhibitions/
インスタでは様々な作品を見ることができます。
https://www.instagram.com/tomokazumatsuyama/
日本で活動しないのはなぜか?
松山さんをはじめとする多くの日本人現代美術家が、海外に拠点をおくのは、日本ではアート活動だけで生活ができないからです。
日本には美術館が約600館あり、世界でも有数の芸術国です。それぞれの美術館は年に必ず数回は特別展を開催し、会場は常に満員状態で芸術に対しての意識が高いように思われがちです。
しかし、生活の中に気軽にアートを取り入れるという習慣はなく、無名の作家の作品を買う家庭はめったにありません。アメリカでは、どの家庭にも必ずといっていいほど、アート作品があります。日本人のように有名な絵でなくては購入しないという考えはありません。日本人が芸術鑑賞欲飲みが強いというのは、今まで培ってきた文化の違いなのでしょう。
またアーティストが大きな作品を展示するスペースをもったギャラリーが日本には少なく、個展をなかなか開けない作家もいます。
こうした理由で日本のアーティストたちはどんどん海外に流出してしまい、同じ日本人であっても作品が直に見ることができにくい状態になっているのです。
私達日本人がアートを特別なものではなく、生活の一部と考えられるようになったとき、アーティストたちとの隙間は浅くなり、もっと自由にアートに触れることができるのでしょう。
参考:
Joshua Liner Gallery
studio visit with artist
TOMAKAZU MATSUYAMA
untapped cities
wikipedia
CBCNET
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