ドイツ最高峰の画家アート・ワールドの巨匠、ゲハルト・リヒター Gerhard Richter。
リアリズムと抽象の間に偶然の要素を入れて作り上げる彼の作品は、50年以上も世界の老若男女に愛されています。
ここでは、ゲハルト・リヒターの経歴、作品、価格、美術館や展覧会を見ていきます。
ゲハルト・リヒターのプロフィール
引用元:https://artscolumbia.org/gerhard-richter-biography-56853/
生年月日: 1932年2月9日
出身地:ドイツ ドレスデン
学歴:ドレスデン美術大学、デュッセルドルグ美術アカデミー
スタイル:資本主義リアリズム、ポップアート、ポストモダニズム、コンセプチャルアート
ドイツのビジュアルアーティストで、抽象的であり、写実的な絵画や、写真やガラス作品も制作しています。絵画と写真の不安な関係に着眼し、どちらの媒体も、現実を忠実に反映、または表現しているようであっても、最終的には主題の部分的または不完全な見方しかできなく、偶然性を取り入れた作品を制作。この純粋な偶然の予期せぬ出来事によって、自然界で見つかったもののような「美」があることを証明しています。20世紀後半の芸術運動に大きな貢献をしています。
フォトペインティング
新聞や雑誌の写真を大きくカンバスに描き写し、画面全体をぼかした手法です。
引用元:https://www.sleek-mag.com/article/gerhard-richter/
引用元:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/267361
カラー・チャート
モザイクのように多くの色を並べた「カラー・チャート」は、ネオダダを彷彿させる体系的なアプローチをしています。カラーホイールの所定の構造に基づいて、色の違った正方形を体系的にペイントしています。まるで、ペンキの色を選ぶときの色見本のようです。
引用元;https://greg.org/archive/2010/08/14/
引用元:https://news.artnet.com/art-world/
リヒターはランダムに色を選ぶことによって、絵画への色使いの制御を弱めようとしていると言われています。
アブストラクト・ペインティング
1976年以降、リヒターは抽象化に集中し、絵画を作成するための一連の体系的なアプローチを展開しています。キャンバスに4つのセクションに垂直に分割された鮮やかな色を塗ります。次に、柔軟性のあるプラスチックで縁取られた長いバトン(スクイージー)を使用して、キャンバス全体にペイントしていきます。表面にオーバーペイント、スクレイピング、スクラッチを行うことにより、前の構成を破壊し、新しい絵画を作成することになります。リヒターは、抽象絵画は「私たちが見ることも描写することもできないが、それでも存在すると結論づけることができる現実を視覚化する」と述べています。
引用元:https://www.ideelart.com/magazine/gerhard-richter-abstract-painting
彫刻
1960年後半からガラス作品の制作も開始します。
1972年にミュンヘンで開催されたオリンピックのスポーツ施設のデザインをブリンキー・パレルモと共同で制作。その後リヒターの作品には多くのガラス彫刻が制作されています。
Spiegel I(ミラーI)とSpiegel II(ミラーII)は、1989年に製作された高さ7フィート、長さ18フィートの2部構成のミラーピースで、境界線を変更し、ギャラリーの視覚体験に新しい感覚を与えました。
引用元:https://www.pinterest.ie/pin/429882726915570086/
引用元:http://fxreflects.blogspot.com/2011/09/gerhard-richter-peinture-2010-2011.html
ケルン大聖堂
リヒターは無神論者でありながら、3人の妻と結婚し子供の洗礼も受けたケルン聖堂では、窓のステンドグラスをデザインしています。
72色の正方形の113平方メートルの抽象的なコラージュで、コンピューターによってランダムに配置され、1974年の「4096色」の絵画を連想させます。リヒターは制作料を受け度っておらず、この材料と窓の取り付けの費用は約37万ユーロ(50万6,000ドル)は、1,000人以上からの寄付で賄われました。
引用元:https://www.derix.com/en/portfolio-items/richterfenster-koelner-dom-en/
リヒター作品の価格
名状しがたいリヒターの作品は、「なんとしてでも、リヒターの作品を手に入れたい」という美術ファンが長期に渡って存在します。ギャラリーでは出品待ちの顧客が常にいます。勿論これは、単に純粋な美術ファンだけでなく、社会的地位を誇ったり、投資目的である人たちも含まれますが。
そのため、オークションで高値を呼び、決して値が下がることはありません。2012年、エリック・クラプトンが所有していた抽象画が、生存する作家として最高額となる約27億円で落札され、世界的なニュースとなりました。
その2年後には、「AbstraktesBild」にクリスティーズ史上最高額の約36億円の値がつきました。
引用元:https://www.theguardian.com/artanddesign/2012/oct/13/gerhard-richter-painting-record-price
Abstraktes Bild (649-2) 1987 引用元:https://www.artnews.com/art-news/market/
2020年10月、香港ササビーズオークションで、上記の作品が約30億円で落札。落札者は、箱根のポーラ美術館。予想落札価格は16億〜19億円でしたが、サザビーズのYou Tubeでは、10分間もの入札合戦を見ることができます。ポーラ美術館のどこに展示されるのか今から楽しみです。
ゲハルト・リヒターの展覧会
Painting after All
会期:2020年3月4日ー
会場:メトロポリタン美術館
過去60年の作品が揃って、リヒターの年代別の作品が楽しめます。
https://www.metmuseum.org/exhibitions/listings/2020/gerhard-richter-painting-after-all
Richter展
会期 | 2020年8月28日~10月2日 |
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会場 | UCHIGO and SHIZIMI Gallery |
住所 | 東京都千代田区神田神保町2-11-4 メゾン・ド・ヴィレ 神田神保町1F |
1960年代から2010年代までに制作されたエディション作品を展示。リヒターの多彩な表現方法を楽しむことができる展覧会です。
リヒターがドイツ最高峰と言われる所以
リヒターの作品は現存するドイツ芸術家では最高値がついていること、幅広い年代に愛され、特にどの時代でも若者の支持層が非常に高いのです。これは時勢にあった作品を作り出しているということでしょう。
そして、彼の芸術家としての歴史、私生活での人生が、ドイツ人として共感と感動を与えます。例えばドイツの歴史に沿っての作品や、妹がナチスの安楽死プログラムで餓死してしまったことなどは、ドイツ国民して強い共感の念を覚えるでしょう。
また公表したくない事実、例えば作品の制作の仕方や私生活での家族の内情などを、潔く発表したりするところも非常に好感がもてます。勿論、リヒター自身は世間の思惑は度外視していることでしょう。
とにかく、美術ファンにとって、シンプルに彼の作品には心惹かれ、説明できない魅力、まるで魔法にかけられたような誘惑に誘われてしまうのは、必然であるという事実を認めざる得ません。
参考:https://www.theguardian.com/artanddesign/2012/oct/13/gerhard-richter-painting-record-price https://www.latimes.com/entertainment/arts/culture/la-et-cm-gerhard-richter-painting-sothebys-20150211-story.html#:~:text=A%201986%20abstract%20painting%20by,the%20field%20of%20contemporary%20art.
杉本博司の経歴・作品・美術館を紹介。写真、建築、古典芸能で時間を紡ぐ。