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関根正二の作品「信仰の悲しみ」「自画像」から見る永遠の未完者の光

浅間山の裾野にあった「信濃デッサン館」作品の中で、強烈な印象を放っているのが関根正二の「自画像」が印象的だった。このデッサンは銅版画のような繊細なタッチで描かれており、彼自身は当時十六歳とは思えないほど大人びた顔立ちをして、鋭い眼光の中にも無垢な魂を映し出しているのである。

関根正二は幻視と情熱の画家と言われ、大正時代の早逝な芸術家たちの一人として知られている。貧しさと孤独感の中で十三歳の時から画才を発揮し、日本各地を放浪し、様々な芸術家たちと交流した。画風は筆触が力強く、色彩に価値観をおいて、浪漫主義的な朱色を大胆に使っている。二科展で計八点の作品が入選しているが、肺結核のため二十歳の若さでこの世を去っている。関根はこの短い恵まれない環境の中で、自己の芸術の達成に苦悩し続けたのであるが、彼は自己内部が欲する「光」を知っていた。それを常に追い求めていたことで、彼の人生を価値あるものにしているのである。

初期の頃は交流のあった芸術家たちから刺激を受け、影響されるごとに新しい世界へ没頭した。思想や画風のみならず、天才と呼ばれる芸術家たちのエピソードまでも真似し、滑稽なほどであった。しかし、型を模倣することにより「関根正二画」という「形」の下積みをしていったのである。青春の最中にいた彼は何度も恋をし、その都度大失恋をし、その上持病も徐々に悪化していったので、心身共に深い痛手を負う。けれども支えきれない孤独感を滲ませながら、知人や親類宅で描きあげられた作品は、人間肯定の穏やかな表情が漂っている。晩年は幻覚に苛まれる日々が続き、死を予知したように制作にとりかかる。「自己の芸術と人生」の意識を昂揚させながら、幻視の画家としての代表作を含む数点を仕上げている。超自然的な視覚の深さはどこか救われた気分が漂い、生の燃焼に対しての敗北感は感じられないのである。

豊かな条件を与えられたとしても、関根の芸術が完成されたかどうかは分からないが、彼は彼自信の真実を得ていたのである。彼の「光」は愛と生の歓喜であり、対象を問わず自己の内部に響く反応に純粋に従うことにより、彼の真実を証明していった。ペン画であれ、油彩画であれ、一つ一つの作品には彼の無垢な魂が宿り、それを物語っている。

この永遠の未完者、関根正二の代表作「信仰の悲しみ」は、現在、重要文化財として大原美術館で世界の名画と共に展示されている。

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