20世紀のドイツを代表する芸術家 オスカー・シュレンマー(Oscar Shlemmer)。
人間工学の視点から創り出された彼の作品は、ロボットのようでありながら幻想的で、バウハウスの教員としても注目されました。
オスカー・シュレンマーの作品、経歴、学歴、賞歴や展覧会、美術館を見ていきましょう。
オスカー・シュレンマーのプロフィール 経歴・学歴・賞歴
引用元:https://www.indiatoday.in/
生年:1888年9月4日
没年:1943年4月13日 享年54歳
出身地:ドイツ シュヴァーベン
学歴:クンストゲヴェルべシューレ 職業芸術学校
シュトゥットガルトアカデミー
オスカー・シュレンマーは6人兄弟の末っ子として生まれましたが、幼い頃に両親を亡くし、嵌め込み細工、寄せ木細工の見習いとして働き、15歳で独立しました。
学校を卒業した後は、風景画を描いていましたが、1912年に抽象画家のアドルフ・ヘルツェルに師事し、画風がキュビズム派になります。
アドルフ・ヘルツェル 1853−1934 ドイツ
初期の作品は現実主義でしたが、徐々に抽象画に転向していき、モダンスタイルの指導者となり、女性のための美術学校も設立しました。しかし、絶え間ない反対派からの圧力で、後年はフリーランスの画家として活躍しました。
引用元:https://upload.wikimedia.org/
1919年からは抽象彫刻も始め、1923年にバウハウス・シアターワークショップの造形主任として勤務します。壁画、絵画、彫刻を担当し、シュレンマーの複雑な表現は影響力があり、バウハウスで最も重要な教師の一人になりました。
しかし、1930年頃からナチスの台頭により彼の指導や作品が退廃的であるとされ、ポーランドの美術学校に移りました。大戦後は、迫害を恐れることなくドイツで亡くなるまで、制作を続けることができました。
シュレンマーの芸術に対する考えは、進歩的なバウハウス運動にあっても、複雑で挑戦的なものでした。けれども、彼の作品は、ドイツや海外で多く展示されました。彼の作品は「純粋な抽象化の拒絶」であり、人間工学に基づきながら分析され、感情的な意味はもたず、人間の物理的構造に焦点をあてています。
シュレンマーは、身体を建築形態として表現し、その図を凸面、凹面、平面を減らし、あらゆる動きをあらわそうとし、人間のデザイン化も図りました。
バウハウス 1919ー1933
バウハウスは、1919年にドイツ(ワイマール共和国)に設立された、世界初の本格的なデザイン教育機関です。芸術と産業を統合した総合的なモダンデザイン様式として知られています。第二次世界大戦前に14年間だけ存在し、マイスターと呼ばれるカンデンスキーやクレーなどの高名な教師陣による造形芸術の学校でした。1996年にバウハウス大学ヴァイマルが継承しています。
バウハウスワイマール校 引用元:Wikipedia
オスカー・シュレンマーの作品
トリアディック・バレエ 1922年
引用元:https://twitter.com/ryuugoku/
ドイツにおいてバレエの革新を試みた機械化の時代を象徴するようなダンスです。立方体、円錐、球体の3つの幾何学基本形のコスチュームをつけたダンサーが、まるでロボットのようなぎこちないメカニックな動きをしました。形態と色と光によって構成される新しい舞台空間を創りだした。トリアディックとは、シュレンマーが重要視する数字「3」、「三つ組み」の意味です。第一部「滑稽な場」、第二部「荘厳な場」第三部「幻想的な場」を3人のダンサーが12通りのダンスを18種類の衣装を付けて踊りました。
引用元:https://www.youtube.com/
絵画
階段 1932 引用元:https://en.wikipedia.org/wiki/
Group at Table 1923 引用元:https://fineartamerica.com/featured/
彫刻
グロテスク 1923 引用元:https://www.artic.edu/artworks/
1921 引用元:https://www.pinterest.com/
オスカー・シュレンマー 日本での展覧会
2019年以降の日本でのオスカー・シュレンマーの展覧会は、まだ予定されていませんが、2019年6月から9月にかけて、東京銀座の無印良品で「バウハウス展」が開かれていました。
バウハウスミュージアム Bauhaus-Museum Weimar
引用元:https://www.nst.com.my/lifestyle/pulse/
ワイマールにあるバウハウスミュージアムがバウハウス生誕100年を記念して、2019年4月にオープンしました。
バウハウスの13,000のコレクションの展示、バウハウスの歴史、現代生活でのデザインの必要性についてのレクチャーも行っています。
開館:10時〜18時。月曜休
場所:Stéphane-Hessel-Platz 1 99423 Weimar
オスカー・シュレンマーの絵画の人物
バウハウスの階段 引用元:https://twitter.com/hamuzou/
シュレンマーの描いた人物をシンプルに観てみたらどうでしょう。
男性も女性も子供も肩幅と腰幅が広く、ウエストは締まりすぎていて、ポーズはみなバレエダンサーのように、背筋を伸ばしピンと立っています。欧州人の凹凸の激しい顔は平坦に描かれ、額から鼻は直線で繋がれアバターのようです。そして、衣服は極めてシンプルです。
美しい人物像ではないのにも関わらず、シュレンマーからの絵画からは静と動が感じられ、それが見事に調和しています。これは本来備わっている人間の身体機能が十分引き出し、人体の理想と可能性を感じさせます。色彩は穏やかで、当時同じマイスターだったクレーのような曖昧でありながら「快」をもたらします。
シュレンマーの絵画を眺めているうちに、過去から引き継がれてきた心地よさと、未来を想像させる空間のなかに入るこんでしまわないでしょうか。革新的だと言われた彼のスタイルに、過去と未来の融合と人間の可能性を見出していけると感じています。