日本の鉛筆画の第一人者の木下晋(きのした すすむ)氏。
健常者ではない人たちの写実描写作品は、人間の生命の尊さや力強さを私たちにうったえかけています。
ここでは木下晋氏のプロフィール、経歴、学歴、賞歴、作品、展覧会を紹介します。
また妻 君子さんは現在パーキンソン病を患い、その生きる様も木下氏の作品に影響を与えています。君子さんとの暮らしや家族、両親もみていきましょう。
木下晋のプロフィール 経歴・学歴・賞歴
引用元:https://twitter.com/
生年月日:1947年6月4日
出身地:富山県富山市
学歴:彫刻家 木内克、洋画家 麻生三郎に師事
経歴
中学時代に美術教師の勧めで、富山大学の研修会に特別聴講生として参加。彫刻と絵画を学びます。 高校1年、16歳のときベニヤ板にクレヨンで描いた『起つ』が第27回自由美術協展に富山県内最年少で入選。
34歳でアメリカに進出しますが、上手く売れずこの頃からモノクロームの鉛筆画が主流となります。このとき、「最後の瞽女」といわれる小林ハル氏に出逢い、小林をモデルにした制作活動を開始します。
木下氏の鉛筆画と小林氏についての参考動画
その後ハンセン病回復者の詩人である桜井哲夫氏(1924〜2011)に出逢い、容姿ではなく、ハンセン病への偏見と差別のために強いられた過酷な人生そのものに心打たれました。そして桜井氏の肖像画がライフワークとなります。
引用元:http://leprosy.jp/people/kinoshita/
初めて桜井氏に会ったときは深い闇の中の孤独を感じ、ぞっとしたそうです。しかし、話してみるとお酒が好きで明るいおじいちゃんだったそうです。それでも、木下氏は自分の心を見られているような気になったと語っていました。
また、山形県鶴岡市の注連寺の天井絵画も作成していて、東京大学工学部建築学科講師、武蔵野美術大学造形学部油絵科講師、新潟薬科大学講師、金沢美術工芸大学大学院専任教授を歴任。名古屋芸術大学の客員教授も務めました。
主な受賞歴
- 1963年 自由美術協会展 入選
- 2013年 紺綬褒章 受賞
木下晋の両親
木下氏が小さい頃から両親の夫婦喧嘩が絶えず、その度に母親が家出していたそうです。母親にとっては3度目の結婚でした。
母親はかなりアグレッシブな性格で、無一文で家を出て、一度家を出ると、徒歩で富山から青森まで行ってしまい、野宿して2~3年は帰ってこなかったとか。
木下氏が小学校に上がる前に、母親と一緒に家を出たことがあり、その時は1度目の夫の奈良の墓に富山から歩いていったようです。
ですから、母親は殆ど家に居ないため、父親に育てられ、2~3年に一度は母親が帰ってくるような生活でした。
父親はそんな母親に木下氏が反発すると、「親に向かって何を言うか」とボコボコになぐったそうです。
父親は中学3年のときに事故で亡くなりますが、その前の晩に、まるで死期を予想していたように、「母親を頼む」と言いい、父親が亡くなったときの母親の泣き叫びかなり取り乱したので、夫婦の絆の不思議さを知ったと語っていました。
母親は晩年、軽度の知的障害を患っていて、木下氏の作品となっています。
木下晋の妻 君子
木下氏が君子さん(1949年生まれ)に出会ったのは1970年ごろの富山で、安保闘争の社会運動の中でした。
駆け落ちをして結婚したそうですが、50年近く一緒に暮らし、君子さんが木下氏の仕事を支えてきました。しかし、君子さんは2015年のパーキンソン病を患っています。自転車に乗っていて、胸の骨折をし、介護が必要なほどで、専門医にかかって病気が分かったそうです。現在は、木下氏が介護をしながら制作活動をし、君子さんをモデルにした作品もあります。
願い 2019 引用元:https://www.sankei.com/premium/news/191124/prm1911240007-n1.html:/
木下晋の作品
引用元:http://slant.jp
引用元:https://www.art-it.asia/
引用元:https://www.amazon.com/
自画像 2002 引用元:http://www.artnet.com/
木下晋の展覧会・個展
2020年の個展の予定はまだ発表されていませんが、2014年12月から2015年2月まで、故吉村芳生氏との「鉛筆のチカラ」という素晴らしい展覧会が、熊本市現代美術展で開かれていました。
引用元:https://www.pinterest.jp/
偉大な二人の鉛筆画の作品を堪能した多くの観賞者たちが、感嘆の声をあげていました。
木下晋の作品から学ぶ「生きるということ」
木下氏のほとんどの作品は、人生で辛酸をなめ尽くした、といってもいい人たちの肖像画です。10Bから10Hの鉛筆を使って大型のケント紙に作品を制作していき、迫力のあるものです。
作品はほっこりと癒やされるものではなく、その奥まった目の見つめる先や、シワだらけの曲がった手が、何を意味しているのかを深く考えさせられます。
作品の人物はときには直視できないような、彼らの心の痛みが刺さるような感覚さえおぼえます。しかし、それでも自分の人生を生き抜く力強さ、生命の尊さ、そして何を見つけようとしているのかを、観賞者に奥深く語りかけているようです。生きる真実とは、何なのでしょうか?
参考:
https://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/bunka/list/201910/CK2019100502000259.html http://leprosy.jp/people/kinoshita/ http://www.artnet.com/artists/susumu-kinoshita/ https://emuzu-2.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_5ede.html https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E4%B8%8B%E6%99%8B