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「引越し」|ショートストーリー

いつもの通いなれた道で、ふと気がつくと家がいつの間にか消えて、更地になっていた、という経験をしたことはありませんか?

もしかしたら、「家」には意志があり、好きな住人がいなくなってしまえば、自分が心地よい場所に引っ越してしまうかも?

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引越し

やっぱり田舎はいい。

俺の大事な同居人が亡くなった機会に、ここに引っ越してきたのだ。
誰にも言わなかったが、まあいいだろう。

元々俺は田舎暮らしのほうが性に合っていたが、同居人はもう年寄りだったし、住み慣れた土地を離れるのはきついだろうと、俺は無理して都会に住んでいた。

周りは洒落た奴らばっかりで、俺の古臭い格好は浮いていた。
近所の連中に合わせようとして、いろいろと流行りのものを買ってみたものの、旧式の俺にはフィットできなかった。

ここは木々や美しい草花に囲まれて、俺の居場所にはぴったりだ。買い物には不便だが、もう俺1人だし、必要な物などない。
これからはのんびり過ごすことができる。

「え?ここに家あったよね?!」
突然、更地になってしまった都会の一画に、近所の人々は騒然としていた。

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