米国人夫妻所有のフランスの画家カミーユ・ピサロの「エンドウの摘み取り」(1887年)が、ナチス・ドイツ占領下のフランスで没収された作品と判明。仏破棄院(最高裁)絵画を元の持ち主へ返すよう命じる判決を言い渡しました。
この「エンドウの摘み取り “La Cueillette des Pois” (“Picking Peas”) 」の絵画の解説や、返還命令がでるまでの経緯を簡単に説明します。
カミーユ・ピサロ 概要
カミーユ・ピサロ (Camille Pissarro,1830年7月10日-1903年11月13日)は、デンマーク植民地時代のセント・トーマス島で生まれたデンマーク系フランス人画家。印象派および新印象派の画家で、田舎や農村の風景を好んで描きました。セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンなどの後期印象派に大きな影響を与え、印象派の創立者です。
ピサロの絵画も持ち主と返還要求されるまで
この絵の購入者が米国フィラデルフィア州のアートコレクター トール夫妻。1995年 ニューヨーク サザビーで出店されていた絵を80万ドル(約8600万円)で購入。
2017年にパリのマルモッタン美術館で展示されていた「エンドウの摘み取り」を収集家のユダヤ人子孫が発見し、返還要求をしました。
コレクターだったユダヤ人男性 サイモン・バウワー氏は、戦時中 フランスのビシー政権に93枚の絵を略奪されており、この絵もそのひとつ。
バウワー氏の子孫に返還されてからの後はまだ決定していません。しかし、トール夫妻は「ビシー政権の犯した罪の代償を、どうして私達が支払わなければいけないのか」と嘆いているそうです。
エンドウの摘み取り “La Cueillette des Pois” (“Picking Peas”) の解説
1887年の制作で、新印象派の幕開けの時代です。
この頃、ピサロはセーヌ川の支流エプト川沿いの村に移り、その後生涯この場所に住みました。数年前に最後の子供、第8子(五男)のポール=エミールが生まれています。シニャックやスーラと出会い、点描画の新印象派に加わります。
この絵は光彩の鮮やかさを華やかな色彩で描き、小さな筆触をキャンバスの上に並べるという筆触分割の手法が使われています。新印象派は、理論的・科学的に色彩を分割しようとし、ピサロはこれによって筆触の色の濁りや不鮮明さから逃れることができると考えました。
この絵はそれほど細かい点描を使用しているわけではなく、人物の輪郭線もはっきりしていますが、そこが、生活画の力強さを表現しています。美術界の絵画のモチーフによってのヒエラルキーがすっかり取り除かれたような、明るい未来さえ感じることができます。