夭折の現代美術家、イヴ・クライン。パフォーマンス・アート、ポップ・アート、ミニマル・アートの先駆者でありました。インターナショナル・クライン・ブルーは、彼のシンボルとして今でも多くの人々に愛されています。
わずか34歳の若さで亡くなった数か月前に結婚し、妻は妊娠をしていました。
イヴ・クラインの妻
ロトラウト・クライン=モキー
1938年生まれ。ドイツ系フランス人の現存しているビジュアルアーティストです。
ドイツ帝国レーリクで生まれ、芸術家の兄とともに10代のころから活動を始めます。
ニースでイヴ・クラインと出会い、交際を始めました。ニューヨークとロサンゼルスに滞在し、ロトラウトはクラインのアシスタント、モデル、マネージャーとして働いていました。
1962年、ロトラウトとクラインはパリで結婚しました。
クラインはマルタ騎士団のマントを着用しているようです。ロトラウトのティアラがIKBなのが良いですね。
数か月後、1962年5月12日、クラインは心臓発作を起こし、5月15日にカンヌ映画祭に出席中、2度目の心臓発作を起こしました。その後も回復せず、1962年6月6日に自宅で34歳で亡くなりました。
その時、ロトラウトは息子のイヴをすでに妊娠していました。クラインの死から二ヶ月後に息子アミュは生まれます。
1968年に、キュレーターのダニエル・モキーと再婚し、二人の間には、3人の子供がいます。1998年以来、ロトラウトはフェニックス、パリ、シドニーなどで活動しています。
初期の作品は、ドローイングと絵画に焦点を当てていましたが、1990年代から、主要な媒体を彫刻に移行。ロトラウトの作品は記念碑的な明るい原色の作品が多いようです。
シンプルでマニュアル的な曲線や、作品の大きさが清々しい印象を受けます。空間との調和も抜群にいいですね。
イヴ・クラインの息子 イヴ・アミュ・クライン
1962年8月6日にニースで生まれ、米国アリゾナ州フェニックスを拠点とする現代アーティストです。
両親は芸術家であり、祖父母(フレッド・クラインとマリー・レイモンド)は画家、叔父に彫刻家のギュンター・ユエッカーがいて、美術界の幅広い関係をもちながら育ちました。
5歳までパリに住み、その後家族とともにスペインのイビサ島で暮らします。12歳でパリに戻り、大学で建築、デザインを学び、「Ecole Supérieure des Arts et Métiers」でサイバネティック理論を学びました。21歳で兵役を終え、アメリカ合衆国コロラド州に引っ越しました。その後現在のアリゾナ州フェニックスに移り住みます。また、アリゾナ州立大学で彫刻とコンピューター サイエンスとアートを学び、美術彫刻の学士号を取得して卒業しました。
卒業後は、ロボット、キネック・アート、デジタル・アートや人工知能の使用など、自然、科学、芸術の融合を主体とした作品が多いようです。
アリゾナ州立大学で知り合った、キャシー・パプチャックと結婚し、娘のジョセファーがいますが、現在は離婚しています。
イヴ・アミュ クラインの作品
彼のデジタル アートワークでは、星や銀河、バクテリアや微生物をデジタル構成の原材料として使用して、天体写真と顕微鏡の両方を組み合わせています。光の気まぐれで神秘的で目に見えない側面をとらえたこれらの作品には、常に本質的な光への魅力があります。作品は、光がさまざまな要素を通過するときにどのように反応するかを示したいという彼の願望を表しています。たとえば、星雲内の水素の雲のように、光がどのように歪んでそのスペクトル内でシフトするかを明らかにします。暗闇を取り除き、光が現れるときの微妙な色に焦点を当てることで、それらを生き生きとさせる星の光に焦点を合わせで作成しています。繰り返しになりますが、、画像を作成するために使用する技術ツール(高倍率顕微鏡など)の多くは、彼自身が考え出したものです。引用元:yungeepark
妻ロトラウトと息子アミュへの偶感
イヴ・クラインの早世は、何が原因だかわかりません。もともと持病をもっていて悪化したのか、それとも薬物使用、もしくは心労がかなりたまっていたのかもしれません。
どちらにせよ、柔道有段者のイヴの突然の死は予想外であり、美術界でのショッキングな出来事でした。
長年付き合っていたロトラウトと結婚したのは、彼女が妊娠したからですが、二人はこれからの生活を楽しみにしていたことでしょう。しかし、結婚してから、たった数か月でイヴはなくなります。周りのサポートもありましたが、夫なしの出産、育児は大変な苦労をしたようです。
ロトラウトの素晴らしいところは、亡き夫イヴの面影だけを追って生きているのではなう、再婚もし、再婚者との間に子供も設けています。もちろんずっと芸術活動もつづけていて、前向きな生きる力を感じます。彼女の作品は奇抜さを前面に押し出しているわけではないのですが、存在感は十分にあって、尚且つしなやかさを感じるのは、彼女自身の生き方からくるものでしょう。
息子アミュは、進化している現代美術の波に乗り、父イヴと同じように画期的な最先端の芸術を目指しているように思われます。また父が若かりし日に選んだ空=宇宙を舞台とした作品を作っているのも、潜在的な父からの影響でしょうか。
ロトラウトもアミュもイヴ・クラインの妻、息子としての知名度のほうが今だ高いのですが、時には、彼ら自身のコンセプトのみ追いながら、作品を鑑賞してもらいたいものです。