フランスの報道、ドキュメンタリー写真の先駆者 ロベール・ドアノー Robert Doisneau。
ドアノーを有名にしたのは、1950年に撮影された、パリの通りでキスをしているカップルの写真、「Le Baiser de l’hôtel de ville, パリ市庁前のキス」です。しかし、一時期忘れ去られた存在となり、再び脚光を浴びた北野は1990年代の後半になります。
ここでは、ロベール・ドアノーの経歴、学歴、作品や写真展を見ていきます。ピカソの肖像画も多数撮ったようです。
ロベール・ドアノーのプロフィール
生年:1912年4月14日
没年:1994年4月1日 享年81歳
出身地:フランス ジャンティイ
学歴:エコールエスティエンヌ 彫刻、リソグラフィー
アンドレ・ケルテス、ウジェーヌ・アジェ、アンリ・カルティエ=ブレッソンの作品に影響を受け、人間の虚弱さと人生の魅力的な瞬間とした作品を創りました。社会階級間の皮肉で遊び心のあるモチーフ、パリの街路やカフェの風変わりなもの、そして子供たちのストリートカルチャーを題材とした創作が有名です。
生い立ちと写真家になるまで
ドアノーの父は配管工でしたが、4歳のときに第一次世界大戦で亡くなりました。母親も彼が7歳のときに亡くなりました。その後、愛情のない粗野な叔母に育てられ、不遇な子供時代を過ごしました。
13歳のとき、彼美術工芸学校のエコールエスティエンヌに入学し、4年後、リソグラフィーと彫刻の学位を取得して卒業。彼の性格は非常に恥ずかしがり屋で、生涯その控えめな性格を持ち続けました。ですから学生の時から写真は撮っていたのですが、初めは石畳みなどの風景ばかりだったそうです。
1930年代にドアノーはグラフィックスタジオで働きはじめ、レタリングアートの仕事をしていましたが、カメラマンのアシスタントをする機会が彼を写真家に変えていきます。
第二次世界大戦までの経歴
1934年 22歳のときに自動車会社ルノーで商業写真家として働き始めました。この会社で働いている間、人物写真への興味を深めます。しかし、遅刻が多いなどの勤務態度が悪かったため5年後に解雇されます。規則を守れないだらしない社会人ともとれますが、会社組織の型にはまることができなかった自由人でもあったようです。
生計を立てるために、フリーランスとして働くことを余儀なくされたドアノーは、当時ヨーロッパ最大であったハガキ産業の仕事、グリーティングカードや土産用の写真を撮っていました。
その後写真家エージェントのチャールズ・ラドーに雇われ、世界中を旅し、ストリート写真を撮ることになります。1940年からは軍隊に所属し、1945年の終戦まで、製図技師の技術を使い、フランスレジスタンス運動のためにパスポートと身分証明書を偽造しました。
戦後から晩年まで
戦後、ドアノーはフリーランスの写真家の仕事に戻り、ライフ誌や他の出版社に作品を載せています。1946年にラドーのラフォエージェンシーに戻り、生涯所属しました。ブレッソンからマグナムフォト(国際的な写真協同組合)の招待を受けたにもかかわらず、ずっとラドーとともにいたのは、彼の芸術家、もしくは職人的な気質を幹事させます。
しかし、ドアノーはファッションフォトグラファーとしても働き、ヴォーグと契約していた時もあります。このエレガントなスタジオで着飾った女性を撮影する仕事は、楽しむことができなかったと語っています。スタジオから脱出できたときは、パリの街でこれまで以上に写真を撮りました。
1946年に設立された写真を芸術とし、フランスの写真遺産の保存する目的の Le Groupe des XV に1950年に参加します。
この年代はドアノーのピークで、現在注目されているストリートフォトを多くとっています。
1960年からは、彼にとって不遇の時期で、テレビの出現により写真雑誌は低迷します。そこで、子供向けの本の仕事や、ブレッソンのように、芸術家たちの写真、ジャコメッティ、コクトー、ブラック、ピカソなどの肖像画も撮っています。
ドアノーの作品が復活を遂げたのは1990年代後半からで、1950年代までのフランスの象徴として、パリの街や人々の写真は、カレンダーやポストカードになっています。
主な受賞歴
- 1947年 コダック賞
- 1956年 ニエプス賞
- 1983年 国家写真大賞
- 1984年 レジオンドヌール勲章
- 1986年 バルザック賞
- 1991年 英国王立写真協会からの名誉フェローシップ
ロベール・ドアノーの作品
この写真は偶然撮ったものではありません。カップルの正体は40年以上も秘密にされていました。二人は俳優志望であり、確かに付き合ってはいましたが、ドアノーの希望で何度もキスをして、その中の一枚です。残念ながらこの二人は9ヶ月後に別れています。
ドアノーは知らなくても、このピカソの写真は見たことがある方も多いでしょう。この年にピカソは『戦争と平和』を制作し、数年前に始めた陶芸も大きな注目を集めていましたね。
ロベール・ドアノーの写真展
「写真家ドアノー/音楽/パリ」
会期:2021年2月5日(金)〜3月31日(水)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1 B1F
パリの街に流れるシャンソンやジャズといった音楽の情景を題材に、1950年代から90年代にかけて撮影された写真作品約200点を展示。