建築史家であり建築家の藤森照信(ふじもり てるのぶ)氏。
創造的な建築で世界中に「藤森建築」のファンが多くいて、特に空中の浮かぶ茶室が人気です。まるでジブリの世界の中に入り込んだような自然の素材や植物が現代建築に生かされています。
ここでは、藤森照信氏のプロフィール、学歴、経歴、賞歴・作品、美術館、著書などをざっくりと見ていきましょう。
藤森照信のプロフィール 学歴・経歴・賞歴
生年月日:1946年11月21日
出身地::長野県諏訪郡宮川村(現:茅野市)
学歴:東北大学工学部建築学科、東京大学大学院近代日本建築史を研究
主な受賞歴:
- 1986年『建築探偵の冒険・東京篇』でサントリー学芸賞
- 1997年 日本芸術大賞
- 1998年 日本建築学会賞論文賞
- 2001年 日本建築学会賞作品賞
- 2020年 「ラ コリーナ近江八幡 草屋根」で日本芸術院賞
東京大学名誉教授、東北芸術工科大学客員教授、東京都江戸東京博物館館長。
藤守氏は東京大学生産技術研究所で村松貞次郎氏に師事、近代日本建築史を研究した後、1974年に、堀勇良氏ら研究仲間と建築探偵団を結成。1986年、赤瀬川源平氏、南伸坊氏らとともに道路観測会を結成。このグループは都市で珍しいが自然に発生するパターンを記録し、アジア全域まで活動範囲を広げます。
近代建築史・都市史研究の第一人者として多くの業績を残したのち、1991年、44歳で神長官守矢史料館で建築家としてデビュー。
2006年のヴェネツィアビエンナーレで日本の代表となり、世界中に名が知れ渡ります。 屋根にタンポポやニラが植えられた住宅、自然木を柱にした鳥の巣箱のような茶室などが注目を集めます。
藤森照信氏の作品は、建築の通念を超えた新しさが、ノスタルジックな印象を受け、きわめて独創的な建築として知られています。
タンポポ・ハウス
東京都国分寺にある藤森氏の自宅。屋根にタンポポを植えたことから命名されました。タンポポは梅雨時に終わり、梅雨から秋が終わるまでポーチュラカを植えているそうです。建築という人工物と、植物という自然のものを共存ではなく、一体化させたい思いで建造されました。
高過庵 (たかすぎあん)
長野県茅野市の藤森氏の私有地に建てた茶室。2010年にTime誌が発表した「世界の危険な建物トップ10」にも選ばれています。「高過庵」は、2本の木の上に建設された茶室。高さは地上約6メートルで、はしごをかけて上り茶室内に入るという仕組みとなっています。
ラムネ温泉館
大分県竹田市にある温泉施設。
外壁は藤森建築の特徴である焼杉と漆喰により白と黒のストライプ模様になっています。
このラムネ温泉館の屋根も大きく、空と建築を繋ぐような印象を受けます。
屋根は手捻りの銅版葺きになっていて、経年変化により、味わいを増していくようになっています。
ねむの木こども美術館
第24回静岡県建設業協会賞 建築部門において最優秀賞を受賞。
手で巻かれた銅の屋根は、尾根に沿って丘につながり、毛むくじゃらのマンモス、と呼ばれています。またシンプルな内装もマンモスの骨を連想させ、日常生活からの離脱を感じさせます。
「ねむの木子ども美術館」は、女優宮城まり子が1968年設立した、日本で初めての肢体不自由児のための養護施設「ねむの木学園」の子どもたちが描いた絵を集めた美術館です。
〒436-0221 静岡県掛川市上垂木3399-1
TEL:0537-26-3985(10:00〜17:00)
モザイクタイルミュージアム
タイルの原料を掘り出す「粘土山」を思わせる外観は、多治見市の産業のシンボルとなっています。すり鉢状に傾斜した地面と、そこに立つ土の壁。「建築物を構成する素材の中で最も根源的なもの」、それは「土」であるという原点を形にしています。
多治見市 モザイクタイルミュージアム
〒507-0901 岐阜県多治見市笠原町2082−50
電話:572-43-5101
https://www.mosaictile-museum.jp/
藤森照信の茶室学―日本の極小空間の謎
日本の極小空間=「茶室」の謎に迫る。 利休はなぜ2畳という極限スペースの茶室をつくったのか。 茶室に火が投じられたわけは。 日本の極小空間の原点である「茶室」に、建築史家であり建築家である藤森照信が迫った渾身の書き下ろしです。 茶室の始まりから現代の茶室までの歴史をひもときつつ、藤森流のオリジナリティ溢れる茶室論がわかりやすい文章で展開され、茶室に詳しい人も、詳しくない人も楽しめる内容となっています。 日本のアイデンティティの一つである「茶室」を改めて熟考できる1冊。 出典:アマゾン
建築と自然の一体化とは何か?
藤森氏のテーマは「建築と自然の一体化」です。
人間も本来は自然の一部でありながら、人工物なしでは生きてはいけない時代です。都会に住んでいる人が、突然、洞穴で生活することは不可能に近いものでしょう。
発展途上国では、今でもすべて自然の素材でできた家に住んでいる人たちがいます。しかし、そうした住居は災害のたびに建て直さなくてはならず、普段の生活も不便を極めていて、その影響は経済、教育、医療にあらわれています。
生活の便利性があり、自然を損なわず、なおかつモダニズムをとりいれたデザインの建物は、現在では一部の人達にしか味わうことができません。世界中の人達が、平等に自然破壊に大きな関心を持ち、スローライフであることを望むのであれば、文明と自然の融合という理想的な世界が出来上がるのではないのでしょうか。藤森照信氏の建築を拝見していると、これからの私達の生き方をじっくり考察していこう、という気持ちにさせられます。