岸田劉生氏の孫、岸田麗子氏の娘 洋画家の岸田夏子氏。
美しく怪しい桜の作品を多く手掛けファンを魅了しています。
岸田夏子氏のプロフィール、経歴、学歴、展覧会を紹介します。
桜の絵を30年以上描き続ける理由は何なのでしょうか。
岸田夏子のプロフィール 経歴・学歴
生年:1940年
出身地:和歌山県
学歴:東京芸術大学院絵画科油絵専攻 卒
職業:油絵画家、清春白樺美術館館長
母親は、日本を代表する画家岸田劉生氏の娘で、「麗子像」のモデル 岸田麗子氏。
父親は、武者小路実篤の「新しき村」で麗子氏と知り合った歯科医師の瀧本貞次郎氏と結婚して、和歌山市に住んでいました。
新しき村
武者小路実篤が提唱した「人間らしく生きる」「自己を生かす」社会の実現を目指して、1918年(大正7年)、宮崎県児湯郡木城村に誕生。理想に共感した人たちが集まり、農業などの労働を分担しながら共同生活をしています。ダムの建設で村の一部が水没してしまったため、新しき村の中心は埼玉県に移り、現在でも10数名の人たちが暮らしています。村内には美術館もあり、武者小路実篤の作品が約400点所蔵されています。
埼玉県入間郡毛呂山町葛貫423
夏子氏には弟2人がいます。戦後は東京に住み両親は離婚。岸田麗子氏は成蹊高校教諭で作家の臼井幸四郎氏と再婚します。臼井氏は11歳年下で、岸田姓を名のっていました。母親 麗子氏は48歳の若さで亡くなっています。
夏子氏が画家になったのは、小さい頃から絵が描くのが好きだったことと、麗子氏から、「年をとってから深みを増す仕事をしなさい」と言われたことが、進むべき道を決めたそうです。
岸田夏子の作品
夏子氏は、冬の雪山や秋の紅葉、春の桜と、自然をテーマにした作品を多く手がけ、特に京都・醍醐寺の桜や、山梨・清春の桜を繰り返し描いています。
天皇陛下も秋篠宮様も、夏子氏の桜の絵をお持ちだそうです。
初期の頃は、母親の麗子氏をテーマにした一連の人物像も描いています。
岸田夏子が桜を描く理由
夏子氏が45歳の時、山梨県の清春白樺美術館で岸田劉生氏の展覧会を訪れた時、美術館のまわりに並ぶ桜の木が満開であまりにも美しく心を奪われそうです。
この桜は、1925年(大正14年)3月、清春小学校の校舎落成を記念して、児童たちによって植林されたもので、廃校になった後清春芸術村となりました。
約30本のソメイヨシノが今も残る桜の名所で、樹齢80年以上の風格ある桜並木が見事です。この桜群は1966年(昭和41年)5月、山梨県の指定天然記念物に指定されています。
桜は人間のような表情をし、朝、昼、晩、四季折々に全く違った趣を見せると夏子氏は語っています。芸術家育成のためのアトリエで、一年の大部分を過ごして、20年間清春芸術村の桜だけを見て、描き続けてきました。
また夏子氏は京都の桜も描いていますが、土地によっても桜は異なった表情を見せてくれて、まるで人間のような性格も感じるそうです。
清春白樺美術館
岸田夏子氏は清春白樺美術館(きよはるしらかば びじゅつかん)の館長をなさっています。
白樺派の作家、武者小路実篤や志賀直哉などの依頼により、画廊のオーナーである吉井長三氏が、1983年に設立された建物です。アトリエ、図書館などからなる文化複合施設清春芸術村の付属施設となっています。
白樺派が愛したルオーをはじめ、東山魁夷や梅原龍三郎、岸田劉生、バーナード・リーチなどの作品、白樺派関係の書簡、原稿、雑誌『白樺』の創刊号から最終号までと、白樺派にまつわる多くを展示しています。
- 場所:〒408-0036 山梨県北杜市長坂町中丸2072
- 電話:0551−32−4865
- 開館時間 – 10:00〜17:00
- 休館日 – 月曜日(祝日の場合は翌日、夏期は無休)
- 入館料 – 常設展示の場合、一般900円 大学生・高校生800円、中学生・小学生600円
清春芸術村には、ルオー礼拝堂、茶室、梅原龍三郎アトリエなど見どころがたくさんあります。詳細は清春芸術村のサイトで御覧ください。
岸田夏子の2019年 展覧会・個展
賛 櫻 天空に游ぶ 岸田 夏子展
場所:大阪高島屋 6階美術画廊
大阪市中央区難波5−1−5
会期:2019年10月2日〜10月8日
詳細は高島屋美術画廊にお問い合わせください。
日本人はなぜ桜に魅了されるのか
桜は日本人にとって特別な思いがある花で、短い春の開花時期を皆楽しみにしています。
植えられる場所は様々で、学校、川べり、墓地、商店街とあらゆる所で桜の木が見られます。この場所を選ばずに、どこでも私達に受け入れられるのはなぜなのでしょうか。
幻想的な薄桃色の小さな花が木の枝いっぱいに咲き誇っているのを見ると、私達の心に美しいだけでなく、それに加えて違う感情や記憶も呼び起こします。そのもう一つ呼び起こされるものは、嬉しさ、悲しさ、切なさや、しまってあった過去の記憶、未来への夢など人それぞれ違うものでしょう。
桜を見ていると、複雑な感情と思考が浮かび上がり、まるで自分の人生を表現しているような気持ちになるから、人は桜に魅了されるのではないでしょうか。
岸田夏子氏は、朝の桜は初々しく楚々としているといいます。開花時期は、昼間や夜に観賞することが多い桜の花ですが、一度、朝の桜を眺めて、また違った気持ちを味わってみたいと思います。
参考:
映像美術館 さくらの喜怒哀楽を描く画家
香美市 第29回企画展「2010年岸田夏子の世界展」
豆記 生まれてくるものを心で見る
ウキペディア 岸田麗子
一般財団法人 新しき村
清春芸術村